YU NAGIRA / NANJI HOSHINOGOTOKU
Publication 2022.8.22 KODANSYA

2023年本屋大賞受賞 凪良ゆう「汝、星のごとく」を読了。

「流浪の月」に続き2作目の凪良作品として手に取った今作。
相変わらずの軽読書家は帯の「2023年本屋大賞受賞」のコピーを目にしロックオン。
経験則から書店員の皆さんの目利きに絶大な信頼を置いてのことではありますが、
今回もその判断に間違いはありませんでした。

結論から言うとドはまり。。。
ページを捲る手が止まらずあっという間に読み終え、
勢いそのままに続編である「星を編む」を買いに走ったほどです。

物語は瀬戸内海の小さな島を舞台に、
同じ高校に通う櫂と暁海が織り成す壮大なラブストーリー。

二人は閉塞感に溢れた小さな島で出会う。
京都から転校してきた訳ありの母と二人で暮らす櫂。
島で生まれ育ち家族と暮らすも不穏な日々を送る暁海。
二人は共に「のっぴきならない事情」を抱えている。

不遇ではあるものの櫂は己の力で人生を切り拓こうと
渾身の一歩を踏み出そうとしている。
しかし「人の噂」が何よりの娯楽とも言える小さな島で、
二人はとある出来事に遭遇し行く手を阻まれそうになる…

この作品が砂に水が染み入るように身体に入ってきたのは、
わたしが田舎町に生まれ育ち作品のポイントである閉塞感を、
リアルに感じられることが大きいと言えます。

足並みを揃えることを良しとする文化と、
それを打破する瑞々しい感性はいつも背中合わせで、
進学で外に出ない限りは、
高い確率でローカルルールの中で生きていくことになる。

かといって都会で己の道を切り拓くことが出来たとしても、
成功と失敗のチャプターは折々に訪れ、
グッとこらえて好機を待ち必要とあらば打って出る。
そう信じながらも泰然自若と流れに身を任せるパターンも
一方では知っておかなければならない。

人生の潮流を読むのは困難で、
小手先のものは剥がれやり尽くした所にしかそれはない。
だからこそ人生は残酷で素晴らしい。

田舎から目標を持って上京し暫くの時を経た今だからこそ、
全身でこの物語を感じられた気がしています。

凪良ゆう「汝、星のごとく」( 講談社 2022年8月2日 第1刷発行 )