本日、父の10回忌を迎えました。

彼は野心家でエゴイストでした。
負けず嫌いを絵に描いたような人間で己にも周囲にも厳しい。
一方、酒と文学を愛したロマンチストでもありました。

よく働き家族を養いストレスを感じれば深酒する日々。
それが、病気の要因ともなりましたが、
それなしの人生などあり得ませんでした。

酒を愛した郷土の歌人・若山牧水の薫陶を受け、
今頃あちらでも本を片手に酒を飲んでいることでしょう。

教職に就き教材研究に余念がなく、
強豪チームの野球部の監督として名を馳せ、
生徒指導の担務となれば補導された不良少年達を引き受けに
夜中に警察へ出向きビンタを食らわせ家へ迎え飯を食わせる。
まさに昭和の熱血教師です。

親父の背中は逞しくなければならぬ。
その思いは強かったようで弱音を吐く姿を見たことがありません。

人間ですから強さと弱さの諸刃だったのは言うまでもありませんが、
強さ一択ということで無理矢理にでも人生を進めていたように思います。

理想の自分であることを旨とするなか、
わたしが中学生ぐらいだったと思うのですが・・・
揉め事に巻き込まれ窮地に立たされた後輩のために、
体を張り独りで話をつけに行ったことがありました。

武道にも通じていたため体力的な自信はあったのでしょうが、
その夜、大事に至らず帰宅しやりとりを淡々と語るも、
酒の入ったグラスを持つ手が震えておりいくら飲んでも酔えないようでした。

そんな姿を見たのは唯一その時だけでしたが、
漢気ロマンチストが炸裂したエピソードを思い出し、
格好つけの極みだったと感心する一方で今では少し笑えてきます。

社会問題を問うた島崎藤村「破戒」を大学の卒論テーマとし、
その後、何度も読み返していた国語の教師だった漢へ、
今夜、文庫を片手に献杯します。